UK — The Register
欧州のクラウド主権規制は益より害をもたらす可能性
政策・産業2分で読めます
EU(ヨーロッパ連合)が進める「クラウドの主権(自国で管理する力)」のルールは、かえって害になるかもしれない、という報告書が出ました。国ごとに自国の会社ばかりが選ばれ、ヨーロッパ全体の市場が育たなくなると警告しています。
何が起きたのか
ヨーロッパの国々は「クラウドの主権」を重視し始めています。しかし、ヨーロッパの研究機関ECIPEは、これが各国が自国の会社ばかりを選ぶ原因になっていると報告しました。報告書は、EUの新しい法律案「CADA」にも批判的です。
数字で見るポイント
- 調査対象はEU9か国の公共クラウド契約です。
- 「主権」という言葉を使った契約は、すべて国内の会社に渡りました。
- 2018年から2025年までの8,725件のクラウド関連の調達契約を分析しました。
- ほとんどの契約は同じ国の会社に渡り、国をまたぐ競争はほとんどありませんでした。
なぜ話がややこしいのか
報告書によると、「主権」という言葉には2つの意味が混ざっています。1つ目は、データを守り、危険を減らすという安全面の目標です。利用者がサービス会社や仕組みを選べることも含みます。2つ目は、自国の会社を守り育てるという産業政策の目標です。CADAはこの2つを同時に狙っているため、混乱を招いている、と報告書は述べています。
なぜ大切なのか
国ごとに市場が分かれると、ヨーロッパ発の大きなクラウド会社は育ちにくくなります。また、多くの国内の契約は、実際には大手の海外クラウド会社の設備を使っています。そのため、「国内の会社だから安心」とは言い切れません。報告書は、「主権」を会社の国籍ではなく、データが安全で、別の会社に乗り換えられるという結果で測るべきだと提案しています。
今後注目したい点
- CADAがEU議会や各国政府でどう扱われるか。
- 公共機関が、国内外の会社を公平に選べるルールになるかどうか。
- データの持ち運びや、複数のクラウドを使う仕組みが守られるかどうか。
用語解説
- ECIPE
- ヨーロッパの国際政治経済を研究する独立した研究機関です。
- CADA
- Cloud and AI Development Act(クラウドとAI開発法)の略で、EUが提案している新しい法律案です。
- クラウド
- インターネット上の大きなコンピューターを借りて、データやソフトを使う仕組みです。