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「存在しない論文」の問い合わせが減ったのは、問題が解決したからなのか――図書館総合展2026「AI時代の学術情報流通と図書館サービス」参加報告|一般社団法人 情報科学技術協会(INFOSTA)
AI初登場 41ポイント
2026年10月に開かれた図書館総合展のフォーラムで、AIが生み出す「存在しない論文」や学術情報の流通の問題が話し合われました。INFOSTA(情報科学技術協会)の担当者が、そのポイントを報告した記事です。
フォーラムで何が話されたか
2026年10月20日、図書館総合展のフォーラム「AI時代の学術情報流通と図書館サービス」が開かれました。大学の研究者、学術出版社の担当者、大学図書館の管理職の三人が、生成AIで何が変わったかを話しました。中心の問いは「AIは賢くなったのに、学術情報の流通はかえって壊れやすくなっているのではないか」というものでした。
数字で見る現状
- 学生で課題に生成AIを使う人は、ほぼ全員です。
- 研究者の8割以上が、仕事のどこかでAIを使っています。
- 調べものを図書館やデータベースから始める学生は約1割です。AIチャットなどから始める学生は約4割です。
- 偽の引用を作るのは数秒ですが、問題として撤回されるまでには中央値で約550日かかります。
現場で起きている変化
新潟大学の高橋菜奈子氏によると、2024〜25年ごろは「AIが挙げた存在しない論文」を探す相談が図書館によく来ていました。今年度は、その相談がほとんどなくなったそうです。また、出版社のTaylor & Francisの山之城チルドレス智子氏は、検索結果の表示は増えているのに論文をクリックする人は減っていると話しました。これを「クロコダイル効果(ゼロクリック検索)」と呼びます。
なぜ大事なのか
「存在しない論文」の相談が減ったのは、問題が解決したからとは限りません。見えにくくなっただけかもしれません。論文の利用数が減ったように見えても、AIの要約を読んだうえで原著までたどり着く人は、関心の高い利用をしている可能性があります。図書館や出版社は、ダウンロード数だけでなく、新しい物差しで学術情報の使われ方を見る必要があります。
これから注目したいこと
- 「Taming the Crocodile(ワニを手なずける)」調査プロジェクトの次の報告。
- AIのライセンスを使い、図書館が大学の中で安全にAIを使えるサービスを作る動きが日本に広がるか。
- 偽の引用を見つけて正す仕組みが、AIの速さに追いつけるか。
用語解説
- INFOSTA(情報科学技術協会)
- 科学技術の情報を集めて役立てることを目指す団体です。
- クロコダイル効果(ゼロクリック検索)
- 検索結果は見られるのに、元の論文をクリックしない利用が増える現象です。
- Taming the Crocodile
- 英国Kudos社の呼びかけで始まった、出版社や図書館を巻き込む調査プロジェクトです。